2009年10月18日日曜日

高速のあり方

 高速道路無料化については賛否両論ある。しかし最近の話を聞いていると「完全無料化」はすでに議論の対象外。実施するとしても渋滞の可能性のない路線のみの「部分無料化」。大都市に絡む高速道路はほとんど有料のままとも言われている。「本来償還後は無料化するはずだった」という向きもあるが、政権交代というのはある意味それまでのしがらみをリセットするチャンス。ここはむしろ日本の将来の交通をどうするのが望ましいかというところから制度を再設計すべきだろう。

 その場合、二つの新しい要素について考慮の必要がある。一つは「目的」としての環境保護。もう一つは「手段」として進んだ情報通信技術。最初に高速道路ができたころにはなかった要素である。

 高速道路無料化についての議論が収束しないのは、それがよいかどうかの判断が微妙だからだ。経済や予算だけでなく環境問題という評価軸も加わって話はさらに複雑。部分無料化にしても「渋滞の可能性のない路線」の線引きでもめるのは目に見えている。

 当然それなりのシミュレーションをするのだろうが、大量の人間が絡む社会シミュレーションの精度には限界がある。では手の打ちようがないかというとそうでもない。高速道路を無料化するかどうかにかかわらず--というか部分無料化するからこそ、ここまで普及した日本のETC(自動料金収受システム)を積極利用すべきだ。

 しかしここでETCの有用性を生かすには大きな前提がある。すべての車両がETCを付けるということだ。では、それが不可能かというとそうでもない。事実シンガポールでは日本のETCに当たる装置を完全義務化している。

 すべての自動車にETCが付いているなら、まずゲートのバーが不要になる。バーがらみの事故がなくなり、ゲートの設置も保守も極端に安くなる。バーがないからとETCを入れずに進入する不埒(ふらち)モノはカメラで記録し罰金を科す。シンガポールではそれでうまくいっている(ちなみにシステムは日本製だ)。

 高速道路の出入り口設置に広い敷地が必要なのは料金徴収ブースへの移動経路とお休み処(どころ)など係員のための設備による。それがなくなれば、全体の設置コストはさらに低くなり、出入り口の場所の自由度も大きくなる。また当然だが毎年何人か亡くなっている係員の事故もゼロになる。

 駐車場からドライブスルーでの支払いなどさまざまな車がらみのサービス支払いにもETCが使える。路上駐車の料金徴収もETCで行えればずいぶん簡単になる。

 そして、何より重要なのがETCなら非常に柔軟な料金徴収ができるということだ。時間割引、車種割引、天気割引、さらには公共性の高い車両や障碍(しょうがい)者はタダとか。どんな複雑な料金体系もコンピューターのプログラムだけ。

 特に重要なのが「混雑してくると課金」という制度設計。実はシンガポールには高速道路はない。システムもETCではなくERP(エレクトロニック・ロード・プライシング)と呼ばれている。一般道含めてのERPが渋滞解消--ひいては環境保護の決め手として、多くの国で導入が検討されているのだ。

 環境保護という時代の風により「道路利用は無料が前提」というのは今や世界的には見直すべき「前提」。高速道路の本家アウトバーンすら商用トラックのERPを義務化し、各国で一般車や一般道への展開が検討されている。むしろ日本はETCにより、よいスタートを切れる立場だ。

 環境保護を考えたとしても、人頭税的環境税より、利用した分払う方が合理性は高い。車庫にずっと入ったままの車に比べ、渋滞に突っ込み無駄な二酸化炭素を排出する車から積極的に取る。渋滞が続けばどんどん課金を高くする。最終的にそれだけのお金を払ってもいい車だけが残り、渋滞も解消する。取るだけでなく、すいているときは無料というのとセットにすれば、趣旨としては「部分無料化」とマッチする。いわば「動的無料化」。その時々の料金はカーナビや携帯で確認できるようにすればいいし、課金ポイント手前で音声案内が出るようにすればいい。

 残る問題は、ETCの設置コストとクレジットカードが必要という加入障壁だろう。しかし、コストについて言えば大量生産で機器は数千円台になる。それと一律環境税とどっちがいいだろうか。加入障壁について言えばSuicaのようにプリペイド式のICカードでも作動するようにすればいい。罰金制度と手前での音声警告を組み合わせれば、バーが無い分、残高不足も大きな問題にはならない。

 ETCはいわば車のSuica。民営化したJRを含め鉄道各社が積極的に非接触ICカード化を進めていることでもわかるように、自動化は確実に料金徴収コストを下げる。料金徴収コストが下がれば利権のパイも小さくなるし、低コストは最終的には利用者の利益になる。さらに長期的視点で言えば少子高齢化の日本にとって介護など人手がいることは人間に、機械にできることは機械にという社会の省力化・効率化は避けて通れない最重要課題である。

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